最初にやるのは計測と墨付け!
木材を切る、穴を空ける、ホゾを掘る、そんなときに事前に加工する部分に線を引くのが墨付けです。
墨付けは木材に、部材としての命を吹き込むとても繊細な工程です。
これがキチンとできていないとそれ以降どれだけ精度良く加工してもちゃんとできません。
高度な技術が必要なわけではなく、基本をしっかり押さえて落ち着いてやれば大丈夫なので、ばっちり習得してしまいましょう。
今回登場する道具
差し金
コンベックス
ノギス
スコヤ
自由スコヤ
測定に使う |
差し金 |
コンベックス |
ノギス |
墨付けに使う |
差し金 |
スコヤ |
自由スコヤ |
差し金はどっちにも使えるんだね
後で詳しく説明するけどいろんな使い方ができる道具だよ
計測時の注意
ノコギリの厚みを考慮する
ノコギリ編で詳しく説明しますが、ノコギリの刃は木材を切断しやすいように、刃を互い違いでほんの少し左右に広げています。
なので、切る、というよりは、削り取っていると表現したほうが正確で、ノコギリを使うと3㎜ほどなくなるんです。
そのため、一つの木材で続けて部材を取る場合、この無くなる分を考慮して墨付けしないといけません。
正確な計測のコツ
基本的な印の付け方
とりたい寸法の目盛りの中心に鉛筆等をあてる
鉛筆等をそのまま動かさずに計測道具を外して
鉛筆等に墨付け道具をあてがって線を引く
目盛りの途中から測る
ゼロから測るのではなく、例えば10センチの目盛りから始めて、読み取った数字から10センチ分を引いた方がより正確に測れます。
計測する時は目盛りの途中から測るようにしましょう。
差し金の使い方
今回の主役だよ
差し金の幅は15㎜と20㎜
15㎜は約3分なので、これが大工さんにとっては便利だったりするのですが、20㎜のほうが重量があり墨付けには安定するという声もあるので、このサイトでは20㎜を勧めています。
大工さんが使う本来の差し金
大工さんが使う本来の差し金の使い方と、これからご説明する使い方は微妙に違います。
大工さんは一般的によく使われる360度の角度ではなく、◯寸勾配といったように底辺の長さと高さの比率で勾配をだすそうです。
これを「規矩術」と呼び、本来の差し金は、「規矩術」で求めた勾配を扱う分度器としてほぼ使われて、直線や直角を出すための道具ではなかったようです。
この記事では現在、建築ではなく一般的な木工での使い方を説明するね
使い道
直角に線を引く
長い方(長手といいます)を木材に引っ掛けて、短い方(妻手といいます)を使って線を引きます。
この時、一つの木材に何ヶ所も直角に線を引く場合、長手を引っ掛ける面を反対側に変えてはいけません。
なぜならもし木材がちゃんと平行に製材されていなければ、引っ掛ける面の違いで線同士が平行ではなくなってしまうからです。
等分割して線を引く
木材を等分割にしたい場合、寸法を測って分けたい数で割って墨付けしても良いのですが、差し金を使えばもっと簡単に印を付けられます。
やり方は、分割したい木材に、その数で割り切れる長さで差し金をあてがいます。
例えば幅11センチの木材を4分割にしたい場合、16センチの長さであてがって、4センチごとの部分に印を付ければ、キレイに分割できます。
直角を確かめる
木は反ったりねじれたりします。木材が真っ直ぐな状態になっていないと正確な墨付けはできません。
反りやねじれがないかを、直角の部分を使ってザックリと確認できます。
角度のある線を引く
45度の線を引く
長手、妻手、ともに同じ長さで画像のように置くと、45度の線を引くことができます。
なぜそうなるのかは、これが二等辺三角形であることを考えると理解しやすいかと思います。
三角形は3つの角度を合わせると180度です。そのうちの一つの角度が90度であれば残りの90度は等しい二つの角で分け合うことになります。
90を2で割ると45ですので、45度の線が引けるというわけです。
30度・60度の線を引く
長手の外側から妻手の外側までの長さが、妻手の長さの2倍となるように置くと、長手のほうで30度、妻手の方で60度の線を引くことができます。これがなぜそうなるのかは、正三角形から考えると理解しやすいです。
正三角形の一つの角の角度は60度です。この正三角形を二分割した三角形がこの差し金で作った三角形なので、もう片方が30度となるのです。
円の中心に線を引く
円周のどこでもいいので差し金の角を合わせ、円周と交わる点X(長手の長さ)=点Y(妻手の長さ)に印を付けます。
点Xと点Yを線でつなぎます。位置を変えてもう一度1と2を行います。
コンベックスの使い方
差し金の長さを超える500㎜以上の測定に使います。フックの部分が動くコンベックスは、引っかけて使う時と押し当てて使う時それぞれ使い分けられるようにです。
また爪には切り込みの穴が開いています。
測り始めの位置に釘をさしておけば爪の穴を釘に引っかけて測ることができます。
ノギスの使い方
外側・内側・段差・深さの測定に使います。
主尺目盛り=1㎜単位を測る
副尺目盛り=0.1㎜単位を測る
1・始めに主目盛りの0と副目盛りの0が合っているか確認。
2・副尺目盛りの0が、主目盛りのどれとどれの間にあるか確認します。少ない方の値が整数の値になります。
3・主尺目盛りと副尺目盛りのどの数字の線が一致しているかを見て、一番近い数字が小数点第一位の値になります。
4・副尺目盛りの数字と数字の間の線が主尺目盛りと合致する場合はプラス0.05㎜となります。
例:
まず副目盛りのゼロが主目盛りの15と16の間にある。
副目盛りの5が一番主目盛りの目盛りと重なっている。
実際ピッタリ合っているのは副目盛りの5と6の間の目盛り。
よって長さは15.55ミリとなる。
スコヤの使い方
直角の精度を確認することと、直角に墨付けすることに使います。
差し金と形が似ていますが、妻手が太く、より安定して木材に引っ掛けやすくなっていて、線が引きやすくなっています。
ノギスとスコヤは、特に精度を求める道具なので、落とさないように気をつけよう
直角や基準がズレてしまうからね
自由スコヤの使い方
設計図の直角ではない角度をトレースして、木材に墨付けする時に使います。
それと、一度角度を作って固定してしまえば何度も使えるので、同じ角度を連続して墨付けする場合も便利です。
留金が緩むと角度が動いてしまうので、しっかりと固定して使いましょう。
差し金だとその度に測って墨付けしないといけないからね
まとめ
墨付け・計測時のコツ
- 墨付け時はノコギリで削られる分も考慮する
- 計測から墨付け時にあてた鉛筆を離さない
各種道具の特徴
- 差し金…計測と、直角・等分割・角度・円の中心などいろんな線を引けるオールラウンダー
- コンベックス…差し金では測れない長さを測るのに使用
- ノギス…幅・内側・深さなどを0.1㎜〜0.05㎜単位で測ることができる
- 完全スコヤ…直角の精度確認や直角の墨付けに特化
- 自由スコヤ…直角以外の角度を写しとって墨付けできる
以上です。今回は木工における一番初めの作業、計測と墨付けについてまとめてみました。
差し金はオールマイティに使え、コンベックスやスコヤ類はその一部機能をより特化させて使える感じかな
最後まで読んでくれてありがとう!またね!
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