木工を制するならまず木のことを知ろう。
というわけで、今回は、これを知っておくと木工がさらに面白くなるよという、木に関することをまとめてみました。
- 木の生命活動の仕組みから主な各部の名称
- 木材のメリットデメリット
- 質の良い木と価格の決まり方
- そしてそれらを踏まえて木工で木を使う時の考え方
などを紹介します。
これを読めば木材の価値を見直す、もしくはますます好きになるかも。
こういう部分が自分には合わないな、という再確認もオーケーです。
いずれにしろ何らかの学びになっていただければ幸いです。
それではいってみましょう!
木の部位の名称と生物としての仕組み
木の丸い幹の内部
木の表面のことを樹皮といいます。
樹皮のすぐ内側を木質部といい、この部分で土中から水を吸い上げ隅々まで送り届けます。そしてさらにその内側から中心部までを髄と呼びます。
樹皮と木質部の間の細胞の分裂によって段々と幹を太くし、役目を終えた形成層は髄となります。
春夏と秋冬で形成層の出来方が違うので、それが年輪となってあらわれます。
実際の生命活動は表面部分で行われているんだね
水がたっぷり
生きている木は中にたっぷりと水を蓄えます。伐採する時期によっては切り口からしたたるくらいです。
中の水分の量(含水率)によって木の強度は変化します。含水率が低くなればなるほど丈夫になっていきます。
なので、木を切ったあとすぐに使えるようになるわけではなく、ある程度の含水率になるまで乾燥させなければなりません。
しかし、完全にゼロにすることはできません。木材は伐採後は徐々に水分を放出することが分かっていますが、これは数百年かけておこなわれていることが分かっていますし、外気の湿度が木材本体とのバランスと比べて高ければ、吸収することも分かっています。
ある程度で見切りをつけて使い出すんだね
自然乾燥であれば数年かけることも、数十年かけることも
数十年!人間の時間軸じゃないねもはや
乾燥速度が部位によって違う
この時、幹の中心部と、表面側で、乾燥の速度は違います。表面部分の方が早く乾燥していきます。
丸太から板を切り出す場合、そのほとんどが片面が中心側、反対側が表面側になります。
なので表面側のほうが早く乾燥し、中心部の変化は少ない。これが木材が反ったり割れたりする主な原因です。
大体10〜15%くらいの含水率で落ち着くんだけど、この範囲内で外気の湿度の影響を受け続けるんだ
強度や特徴も部位によって違う
さてこの丸太からどの部分をどう切って板や角材にしていくかによって、強度の違いがでてきます。
中心部分を心材(しんざい)外側を辺材(へんざい)と呼びます。
心材のほうが耐久性があって狂いが少ないです。辺材はその逆でそのうえ虫害を受けやすいといわれています。
さらに、切り出した材の年輪の走り方によっても強度や狂いやすさは違ってきます。
年輪の外周の線と直角の方向で切り出した板は柾目(まさめ)と呼び、割れや狂いが少なくなります。
年輪の外周の線に沿って平行になるように切り出された板を板目(いため)と呼びます。
表面側と中心側にハッキリと分かれるため狂いや割れが大きくなります。
木のどの部分かで特徴が大きく違うね
これを知ってると部材を見てどう使うかを考えやすくなるよ
節
木の枝を切ると、その断面は節となります。
木が成長して幹が太くなると、その節は中に埋もれていきます。
なので製材として切り出した時に中から現れることがあるよ
こればっかりは切ってみないと分からないんだ
節は大きく「生き節」と「死に節」に分かれています。周囲の組織と堅く付着しているか、分離しているかの違いで、生き節は強度的に問題ありませんが、死に節では大きく低下します。
木の良さ
さて以上のような特徴をもつ木にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
①調湿する
木材は水分を含んでいてその比率を含水率であらわし、大気の湿度の影響を受けると書きました。これは言い換えれば、調湿をするということです。外気の湿度が高ければ過剰な水分を吸い込み、低ければ吐き出します。
②断熱する
乾燥させた木材の水を蓄えていた部分は、空気層となります。この空気は熱伝導率が低いので高い断熱機能を持っています。
その熱伝導率は鉄の500分の1です。
③千年以上の強度維持
木は伐採後時間をかけて徐々に乾燥比率を高めていきます。乾燥すればするほど丈夫になるということは、時間が経過すればするほど丈夫になっていくということです。その期間は数百年で、その後、千年ほど時間をかけて強度を落としていきます。落ちるといっても、元の強度に戻る程度であることが、法隆寺の木材で実証されています。
コンクリや鉄といった、生産された直後が一番丈夫な素材と正反対。一生モノというより、一家相伝モノだね
同じ用途のものがプラ製や樹脂製で100円ショップで売っていて、木製が数千円だとしても、耐用期間単位で考えたらそれほど変わらない。それを自作で千円弱で作れたら文句なしだよね
④燃えるけど、なかなか燃え尽きない。
木は着火するとまず表面から炭化していって、中にたどり着くまで相当時間がかかります。
鉄などはある程度高温になると急速に弱まり曲がるので、むしろ木造のほうが倒壊に時間がかかります。
⑤消臭や殺菌効果のある成分を放出する
元々虫や微生物から身を守るために放出している成分で、森の空気が澄んでいるのはこれのおかげです。
伐採後も放出し続けます。
⑥反射光が和らぐ
表面のミクロな凹凸が光を錯乱させて弱めています。
木材にあたった光が優しいのはそのため
⑦音や衝撃を和らげる
中に空気が含まれているため。
コンサートホールとか木材が多用されているのはそういうこと
⑧無垢の木は有害な物質をださない
化学成分がないので。
ただ木の板を何枚も貼り合わせたベニヤなどの合板は接着剤が使われているのでご注意
⑨木はそのままで土に還る
木材は環境次第では腐ります。これは人が利用するにあたっては困ったことですが、ようは微生物が分解をしているのです。
環境に負荷がかかりません。
良いことだらけじゃん。デメリットはないの?
あるよ。すでに触れているけど、改めてまとめてみよう
木の注意点
①木は変形する
乾燥度合いによって反れたり割れたりする。その振れ幅は徐々に少なくなるがそのスピードは数百年。外気の湿度によって乾燥比率は動くので、常に変形し続ける。
②木は腐る
木材は微生物のエサとなるので、その微生物が活動しやすい環境の中にある木材は速攻食べられて腐ってしまう。その微生物の活動環境をきっちり理解して、条件を満たさないようにすれば大丈夫。とにかく湿気をこもらせないように。
ようは木は生命であってアナログだということだね。
このゼロイチでは収まらないことを受け入れられるかどうかだよ
質の良い木材とは
何が価格を決めるのか
一般市場では、木材の外見が綺麗であればあるほど高価になります。
これは主に、
- 節が少ない
- 割れが無い
などが影響しています。
質を高めるためには
ゆっくり育てる
年輪は一年(春夏と秋冬の形成層の出来方の違い)で一つずつ増えます。
この年輪の間隔が密であればあるほど、強度がでます。
ゆっくり育てるためにまずすることは、枝を落とすことです。
植物は葉から光合成を行い成長します。この葉の量を制限することによって、成長を抑制してスピードを抑えます。
枝の本数も減り、節も埋もれていくので、表面上節の少ない綺麗な木材となり一石二鳥です。
乾燥のさせかた
最も負荷がかからず自然なのは天然乾燥(要するに外に放置)ですが、時間がかかり過ぎるので、たいてい人工乾燥となります。
これは、高温短時間乾燥と、低温長時間乾燥に分かれます。
高品質になるのは低温長時間乾燥です。
しかし当然、高温で処理した方が早く回転できます。なのでそのほとんどが、高温短時間乾燥です。
短時間で済むなら、それで良いじゃん
問題無ければね
実は急激に乾燥させると、その変化の早さで、木材の中心部が割れます。
一般的には、表面が割れることが多く、消費者はこの表面の割れをとてもイヤがります。
けれど、実は、表面の割れは強度的にはあまり影響ありません。
けれど中心部の割れは、強度に大きな影響を与えます。
もちろん悪い意味で
じゃあダメじゃん
でもちょっと待ってください。
消費者は表面の割れ(見た目だけ)を気にします。
なので木の価格は外見だけで決まります。
であれば…
急速に乾燥させてどんどん回転させた方が儲かる。
内部が割れて強度は落ちるけど、重要なのは外見なので問題無し!
ということが行われていたりいなかったりが現状のようです。
問題あるわ!
急速乾燥だと木の本来の成分も抜けてしまって、燻製のような臭いがついちゃう。これを木の香りだと誤解している人も
木工で木材をどう使うか
さあ以上を踏まえて、実際家具を作る場合、どう部材を作っていくかの考え方を最後に紹介します。
一にも二にも、節の位置を考える
前述のように、木材はだいたい節があります。
死に節は論外として、生き節は、とても堅いです。柔らかい杉といえど、堅いです。
そして木材は生き物ですから、この節の位置はコントロールできません。
なので、接合する部分は節を避ける。切る部分は節を避ける。完成時に見える部分に節は避ける。
といったことを考慮して、一つ一つの木材をどの部材として使うかや、どの向きで使うかや、どの部分を切るかを決めていくわけです。
逆にあえて節を見せる配置をするという考え方も。あと年輪の見せ方もそっくり同じことが言えるね
一つとして同じ木は無い!そこが木工の面白く、オリジナルが出せるところだね!
まとめ
いかがでしたでしょうか。
まとめると
- 木はそのもの自体はもちろん、部位によっても様々な特徴がある
- 調湿・断熱・だんだん強度が高くなるなどメリットがたくさん
- 木の質の決まり方と価格の決まり方は一致しない
- 全く同じ木は存在しない。部材によって使い所を考えよう
となります。
今回は木について、木工をするにあたって知っておくと良い基本的なことをまとめました。
参考になりましたら幸いです。
最後まで読んでくれてありがとう!
またね!
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