さて昨今では様々な農法が確立されておりまして、ややこしいことに農法によっては真逆なことを主張してたりすることがちょくちょくあります。
この辺が、ちょっとかじり始めた人からすると大変混乱を呼びます。
その筆頭が、「肥料あげなきゃ育たない」と「肥料無くても育つ」ではないでしょうか。
え…?ちょ、初っ端から何言ってるの??
まあそうなるよね
真逆ですよね。
でもこれ、どちらも正しいですし、どちらのやり方も作物を実らせています。
ここを理解するには、畑の土中で何が起こっているかを知ることが必要です。
これから数記事で、様々な農法の主張に惑わされずに、しっかりと軸を作って理解できるようになるために、いくつかのテーマで根本的な自然の仕組みを書いていきます。
第一回目は、結局肥料いるのいらないの問題を取り上げます。
これを読めばもう混乱することは無くなるでしょう。多分。
結論から先に言えば、人間が肥料を与えなくても良い環境を作れれば肥料いらないし、そうじゃなければ絶っっ対に必要です。
農法を大きく分けるとこの3つ
慣行農業…使われる肥料は【化学肥料】
今現在農業として最も行われている農法。
機械、化学製品、化学薬品を惜しみなく使う。
有機農業…使われる肥料は【有機肥料】
なるべく化学(無機物)を使わないで行う農法。
籾殻や米ぬかなどの植物由来のモノや鶏糞や牛糞などの動物性のモノを惜しみなく使います。
自然…人は施肥をしない
人間が何をしなくても植物が勝手に育ち、場所によっては人間にとっての食料となるモノが実っていたりします。あんなに苦労しても育たなかったりするのに、どういうことやねん?
まあ改めて問われると確かに不思議だよね
自然というのはあらゆる要素が影響しあっている究極的にカオスな場所なので、なぜ自然に育つのかというのを簡潔に述べることはできません。
一説によると外国の蝶の羽ばたきが台風となって日本に来たりこなかったり
マジでっ!?
そんな中で、なるべくカオス要素を削ぎ落とし、出来るだけ誰でも再現できるやり方を模索するための学問が『農学』なわけで、その最も究極的なカタチが現在の農業なんです。
この、自然の状態から、最先端の農業までの幅って、ものすぅっっごい大きいんですね。
いろんな人が、様々な農法を編み出していますが、どれもこれも「現代の農学」から「自然」までの広い範囲のどこかに位置していて、決して重なり合っていないので、たとえ真逆なことを言っていても矛盾することなくどちらも正しく成立しているんです。
白紙状態の人からしたら、まさにパニック
でも本当こういうこと多い。作物を育てるって、基本的に明確な答えが無い世界なんだ
大まかな肥料の特徴
まずは全体を表にしてみたよ
化学肥料 | 有機肥料 | 不施肥 | |
肥料自作 | できない | できる | ー |
育成再現性 | 高い | 低い | 極めて低い |
持続性 | × | △ | ○ |
環境負荷 | × | △ | ○ |
コスト | × | △ | ○ |
土中生物 | 必要無し | 微生物 | 微生物・糸状菌 |
次に軽くメリットデメリットを挙げてみるね
化学肥料
メリット
土中が無生物でも成立するので、業として管理がしやすい。
無生物ということは、人間だけで管理が出来るので、再現性の高いやり方ができます。
むしろ化学肥料使わないと現在の流通を踏まえた農業をするのはとても難しい
デメリット
無生物の土は痩せる。雨の少ない地域はもれなく砂漠化している。
化学肥料は個人が自力で作れない上に生産はほぼ海外に依存。
これを書いてる現在、輸入が滞り、国内で化学肥料が入手できなくなっているととんでもなく深刻な状況になっています
有機肥料
メリット
有機物を素材としているので、きちんとバランスを保てば永続的に調達可能。
デメリット
コストはその人の環境によって左右される。自分の生活で資材が発生して調達できるなら無料に近いが、これも買っていたら化学肥料よりも高くなる可能性有り。
完全発酵させた上で施肥をしないと、土も地下水も汚染させてしまう危険性がある。
現在の有機農業でそこそこ起こっていることで、その環境破壊は化学肥料に勝るとも劣らない。
不施肥
ここではより正確な表現として「不施肥」という言葉を使っているよ。実際は「無肥料栽培」とか「自然栽培」とか表現している人が多いんだけど、今はザックリほぼ同じととらえてもらってオーケー
メリット
最も自然のコトワリに近いので、一番費用も環境負荷もかからない。
デメリット
そもそもその仕組みをしっかり理解してやらないと全く作物は育たない。
最もアナログで、再現性皆無な世界。
正しくできても土中の構造を変化させている間はほとんどマトモに育たない。
答え合わせは数年後。
それでは詳しく解説していこう!
詳細
まず生命の循環が巻き起こっている大自然の土の中には、あらゆる菌や、微生物がいます。
これらの生物の生命活動は、植物が必要とする栄養素を作ります。
具体的な動きはこんな感じです。
糸状菌…
植物の栄養となる有機物を周囲から集める
微生物…
それらを有機物から無機物へ変える
植物…
無機物状態の栄養素を吸収する
植物って無機物じゃないと吸収できないんだね
植物には栄養が必要
3大栄養素「窒素・リン・カリウム」
植物の成長に必要な栄養素は様々ですが、そのほとんどを占めるのが「窒素」「リン」「カリウム」で植物の3大栄養素といわれています。
これらの栄養素は、無機物の状態でないと植物は吸収できません
地中の菌や微生物は、せっせと植物の栄養素を集め、吸収できるように調理しているのですが、その代わり、植物が光合成で生成する糖を分けてもらっているんです。
大自然の持ちつ持たれつだね
化学肥料=無機物
化学肥料は人間が化学変化を利用して作った無機物です。なのでそのまま植物の栄養となります。
有機肥料=有機物
無機物に変えないといけません。
有機物を無機物に変えてくれるのが微生物です。
自然=誰も肥料なんてあげない
もともと窒素なんて空気中にたくさんあります。化学肥料だって空気中から窒素を取り出して作っています。
その他の成分もいろんな生物が存在する自然の中なら至る所にあるんです。
それらをかき集める役目をするのが糸状菌です。
糸状菌=キノコととりあえずイメージして大丈夫?
とりあえずね。
超厳密にいうと様々な菌や微生物が登場する物語なんだけれども、地中で起こっている仕組みをザックリ説明したいので、この記事では糸状菌と微生物の2種類で表現しているよ
土の状況が肥料の必要性の有無を決める
というわけで、自然の生態系がきちんと機能している世界では、そもそも人間が肥料を与える必要がありません。
土の中がどうなっているかで、肥料の必要性や使うべき種類が変わってくるのです。
- 植物だけで土中に生物無し…化学肥料(←無機物)
- 植物と微生物…有機肥料(無機物化が必要)
- プラス糸状菌…不施肥もできる
不施肥なら糸状菌と微生物がいないとダメですし、有機農法なら微生物がいないとダメなんです。
人によって肥料の有無やその資材の種類や使い方が違うのは、このどの状態の土を使うのか、で違うんです。
ここをまずおさえることが理解する側としてとても重要です。
農業で化学肥料が選ばれるわけ
ではなぜ農業では圧倒的に化学肥料が使われるのか。これは再現性を維持するためです。
大雑把に、土の中に生物を必要とすればするほど、不確定要素が強くなります。
同じやり方でやってもできる人とできない人がいて、野菜も細かったり小さかったりと安定しません。
これが再現性が低いということです。
逆に、土に中が無生物であればあるほど、管理がしやすいです。
同じような形や大きさの野菜を同じ成長スピードで同じ時期に収穫するためには、野菜以外のあらゆる生物を排除して、人間の手だけで管理しないとまず無理です。
やり方さえ間違えなければ、誰がやっても同じような野菜が収穫できやすくなります。
これが再現性が高い、ということで、農業は「業」ですから、一定のレベル以上の再現性を求められるので、化学肥料が使われる。
化学肥料が必要な農法では肥料無しで作れるわけないので、肥料無いとできない、が大きな声になっている、というわけです。
有機農法は自然に優しい?
有機肥料について、これをもう少し補足すると、例えば自然では動物が糞を地べたに落とします。
そこでまず①の微生物が分解・発酵して、分解・発酵されたものが少〜しずつ地中に浸透していって、土の中で②の微生物が本格的に有機物から無機物に分解していきます。
めちゃくちゃゆっくりと時間をかけて行われている
自然は雄大だね
厳密に言えばもっともっと複雑なのですが、ここで言いたいのは分解・発酵には段階があるということです。
なので、土の中に入っても良い状態まで分解・発酵が進んでいないと、②の微生物はめちゃくちゃビックリしますし、植物は間違えて吸収しちゃって健全ではなくなります。
この、土の中に入れても良い判断が人間にはすごく難しく、ベテランの農家さんでも根本的に間違っていたりします。
また、本来自然では、その日に必要な分を糸状菌が集めて、その日に必要な分を微生物が無機物に変え、それを残さずに植物が吸収していて、意外と土中に栄養素は残っていません。
農業では、一期分の肥料を一気に土の中に入れていきます。ここでもうすでに不自然で、結果、肥料の何割かはそのまま沈んでいって地下水に入って汚染していってしまうのです。
これは化学肥料、有機肥料どちらも共通することです。やり方を間違えれば、環境を汚すことにかけてはどっちもどっちなわけです。
ややこしいのは肥料が完熟発酵してなくてもそこそこ野菜は(不健全ながら)育っちゃうんだよね。だからみんなこれで正しいと思っちゃう。
そして見えない土の中や水を汚してしまう。
そのため土壌や水の汚染ってのが世界的に深刻だったりします。
とっても自然に寄り添っているイメージがある有機農法ですが、とんでもない環境汚染の原因だったりするのですね。
多分この有機肥料を環境汚染させないように完全発酵させるが農業においてトップレベルに難しい。不施肥で安定的に野菜を作るのと同じくらいに
キングオブプロの域
「肥料が必要」が常識となっている正体
有機農法も、栄養素を分解するだけの生物しかいなく、人間が肥料を与えないと理論上育ちません。
日本は99.7%以上が化学肥料を使う慣行農家で、有機農家が0.2%に満たないと言われています。
結果99.9%以上が、肥料が無いとマトモに育たないやり方でやっている世界なので、不施肥栽培なんてものすごい少数派で、頭から否定されがちになります。
もはや宗教化に近い扱い
でもごく僅かにいて、ごく僅かなもんだから不施肥で野菜を育てちゃってると注目されます。
肥料無いと育たないという大きな声の中、不施肥で実際にやってみせられているもんだから下界は混乱してしまうわけです。
自然が「主」、科学が「従」
中には実際に現象として現れていることを目の前にしても、「科学的でない」という理由で受け入れない人もいます。
でもこれは逆です。
自然現象=物事のコトワリを解明するために生まれた学問がすべての基礎である「物理学」です。
自然現象が主で、科学が従、その逆はありません。
それだけは、どんな環境となっても、どれだけ科学が発達しても、変わることはありません。
結論:「未来はこっちだ」
以上の通り、肥料の有無は、土の中がどうなっているかでするべきことが変わっているだけで、何も矛盾することではありません。
不施肥は、魔法を使っているわけではなく、神の力を利用した宗教でもありません。物事の理に忠実に従って、自然現象を最大に利用しているだけです。
お金をなるべくかけないためには、自然にできるだけ逆らわず、利用することと別記事で書きました。
作物の形や大きさを均一に仕上げる必要が無く、収穫期を一定に保つ必要性も無い家庭菜園は、基本不施肥。施肥はするにしても手間とお金がかからず生態系にも影響を及ぼさない範囲でやるべきです。
お日様の光も雨もタダ。生態系の働きに給料を払う必要も無いのですから。
最後まで読んでくれてありがとう!
またね!
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