家庭菜園においても、農業にとっても、たくさんの生き物が厄介な相手として多くの人に認識されています。
なぜ農業において、防獣・防鳥・防虫という概念があるのでしょうか。
こいつら育てている野菜を食べちゃうから
その中でもとりわけ大きな存在なのが虫です。
一般的な野菜の栽培では、単純に青虫が葉っぱを食べているなら、その青虫を排除しようとするのが最も多い反応です。
しかし、一つの種だけに絞って排除してしまうと、そこに繋がっていた生態系にも確実に影響を与えます。その現象が巡り巡って、目的の野菜に悪く反映してしまうことも多々あります。
今回は虫に焦点をあてて、なにを虫はしているのか。自給においてどう接するのが最もバランスが良いのか。この辺のヒントになりそうなことをまとめてみたいと思います。
まずは、分かりやすい現象として有名な、キャベツと、青虫と、ヨトウムシの関係をみてみましょう。
害虫と益虫は紙一重
キャベツがある程度大きくなると、花芽を守るために丸まる内側の葉と、地面に沿って広がる外側の葉に分かれます。
ここが明確に分かれるくらいに成長してしまうと、青虫はキャベツの外葉を主に食べるようになるんですね。
これは一説では、そこに糞をさせて養分(リン酸)を集めようと、わざと外葉を(食べやすいように変化させ)食べさせて本命の結球部分を成長させようという、キャベツの戦略ではないかとも言われています。
しかしたかっているからと青虫を排除してしまうと、青虫がいる時は近づいてこなかったヨトウムシが寄ってくるんです。
こちらは外葉も内葉も関係無く、丸ごと食べてしまいます。
この関係が分かっていれば青虫は害虫でもあるがある意味益虫でもあり、対処としては内葉のほうにいる青虫だけを取り除き、外葉の青虫はあえて残しておいたほうが良いことが分かります。
このお話は結構有名です。
この他にも、農業において害虫の代表的存在であるネキリムシから始まる「ネキリムシ→寄生蜂→カメムシ→アリ→アブラムシ」の関係とか、鳥を寄せ付けないようにすることによる虫の天国化など、一つの事象の薄っぺらい対処で、弊害が芋づる式にやってくる例はたくさんあります。
だから面倒だから薬で全てを無くしてしまおうとなる
そして生態系が無くなるから肥料やさらなる農薬が必要になるという負の連鎖に
この辺、こちらの本がとても理論立てて解説してあって良く理解できます。
虫のことだけでなく、植物の栽培において全体的に理論から入った仕組みを学べるので、とてもとてもオススメです。
虫の役目は何なのか
さてこの「無肥料栽培を実現する本」には、じゃあ人間は、虫の対処をどうすれば良いのかについて、
その虫が何をしに来ているかを推測し、その虫が行うことを人間が先回りして行ってしまえばよい
無肥料栽培を実現する本
と主張しています。
そしてアブラムシやウリハムシなど、これまた害虫の代表格のような虫をとりあげ、実際に何をしているか、そしてどう対処すれば良いのかを一つ一つとても分かりやすく説明してくれてます。
詳細は是非購入して読んでみてね。めちゃくちゃ面白いよ
個々の虫の働きについては各専門書にお任せするとして、先回りで対策するために、そもそも虫の役目は何なのかを、虫全体を包括して、一言にまとめてみましょう。
このサイトでオススメする協生農法や、
炭素循環農法から学んだことからも振り返ってみると、
協生農法では、虫が異常に発生するのは生態系バランスをとろうとするためとあり、炭素循環農法では、腐敗型になって(不自然に成長して)しまった野菜を処理するためとありました。
おそらくこの二つが、虫の使命なのではないでしょうか。
- 生態系のバランスをとる
- 腐敗するモノを消費する
こう仮定すると、対処法は、
- 畑内で栽培する野菜や花を一種類だけにしない
- 発酵型になるように育てる
の二つになります。
二つの農法を簡単に振り返ると、多品種を混生密生させること。自然の流れに反しないようにすること。だったね
農業と虫・家庭菜園と虫
一つの結論として、生態系は一種が極端に増えるとバランスを取ろうと動く。だからそれを食べる虫が極端にわく、となりました。
こう考えると、単一栽培の大量生産が当たり前の農業では虫との戦いになるのが必然であることは容易に理解できるでしょう。
これはもう、避けて通れないことです。
一方、多品目少量生産にして、多様性を広げ全ての生き物を受け入れる方針を取れば、虫の被害は激減します。
ゼロには決してならないけど自分達が食べる分は十分実る
つまり家庭菜園であれば、虫を完全に敵としないやり方ができるのです。
自然は過剰を分散させようとするので、多様性を増やした方が安定しやすい。
コストも手間も、こちらの方が圧倒的にかかりません。
自分達が食べる分、60〜80点で良しとすれば、こういう形で野菜の栽培ができます。
自給においては虫と共存したほうが有利
そのためにはこの虫はなぜそんなことをするのか?を一つ一つ理解することが必要だね
欠かせない虫の働き
虫の困った行動とどう付き合うかという基準で見てきましたが、虫には人間にとってとても役立つ部分もあります。
農薬を使わなければこういう利点も活かせます。それぞれ見ていきましょう。
受粉をする
植物は自分の種の保存ために、自然現象や動物や虫を使って、タネを残そうとします。
この中で、虫の生態を利用する花のことを虫媒花と呼び、花粉を運ぶ虫のことをポリネーターと呼んだりします。
その代表的な存在がミツバチです。
もし彼らを排除してしまった場合、受粉作業は人間の仕事となりますが、これは人力でやるとすると具体的に、雌花一つ一つに筆を使って花粉をくっつけるという、とんでもない作業となります。
野生種であるニホンミツバチは、只今農薬の影響で絶賛激減中であります
自然のポリネーターが不十分となってしまったため、人力を使うか、そのためのミツバチをお金をかけて飼育するというようなことが行われているようです。
果物は、圧倒的ポリネーター頼りになってる
参考『果樹・果菜類の受粉を助ける花粉媒介昆虫調査マニュアル』
食料になる
近年は食料の安定性を高めるため、昆虫食も注目されています。
その生産・流通・販売においての持続可能性についてはまだまだ一概に判断できるものではなく、身近な食糧足りえるかはあらゆる方向から引き続き検討が必要かと思いますが、人類全体の選択肢としてではなく、単純に一個人の問題に落とし込めば、捕まえて食べてみるというのはすぐにでも実践できるかと思います。
自給としてはすぐに取り入れるべき良い事づくめなのが昆虫食
味や栄養素や飼育のコストや労力を考えると、一番バランスが良いのはトノサマバッタらしいです。
一番美味しいとされているのは、カミキリムシの幼虫らしいです。
お試しあれ。
土を作る
虫の働きは、植物の成長に適した土作りにも、多大な影響を与えます。
虫が土中を移動することが、人間にはできない絶妙な耕作になります。
また、植物に必要な栄養素の一つであるリン酸を自然界で供給してくれるのは、発芽しないでそのまま土に残り分解された大量の植物のタネと、虫や動物の糞です。
リンの供給でよく使われるのは動物性を除けば米ぬか。米も稲のタネで、米ぬかは米の一部分だからね
雑草や虫を排除しなければ、リン酸は自然と供給されるわけですね。
終わりに
いかがでしたでしょうか?
虫への印象がまた違うモノになったのではないでしょうか。
以上のように、一種の虫が極端に発生してしまう環境を作っておきながら、その虫だけを根絶しようとするとコストと労力が跳ね上がり、とてもではないですが持続的な自給はできません。
そんなのは農業に任せましょう
なぜその虫はこんなことをするのかを知り、その仕事を先回りしてちょっとやってあげればそれだけで虫の姿はガッツリと減っていきます。
その上で、利用できるところでは上手にそのメリットを享受して、その分自分の仕事を減らしてしまいましょう。
それで自分達が食べる分だけ十分に収穫できれば、多分それが最高ではないでしょうか。
最後まで読んでくれてありがとう!
またね!
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